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旧テーテンス熱海別邸




熱海の中心街から海岸線に沿って

車を走らせること15分ほど

急な側道を下ったエリアが 伊豆山稲山地区の別荘地である。


曲がりくねった道を進み車を停める。

さらに徒歩で階段を降りていった先に

木造の平屋が見えてくる。

目の前に広がる相模湾を抱くように

建物はくの字型をしている。

南側の居間のガラス戸を引き静々と中へ入る。


モダニズム建築の巨匠が設計した住居で

丸1日を過ごすことができるという高揚感…

いつしか懐かしさと安心感も入り混じっていく。


現在のアメリカ人オーナーがDIYで

新たに作ったアイランドキッチンに立つと、

正面には居間全体が、 右手の窓越には遠くに初島が見える。

反対側に並べられたブルーのソファに腰掛けると、

今度は正面にキッチン、左手に熱海方面が望める。


世界中を旅しているというオーナーが集めた

置物や調度品も違和感なく空間に馴染んでいる。

何よりこの建物への深い愛情とリスペクトを

其処彼処に感じることができる。


2日間とも雨の予報が幸運にも

翌朝目覚めると、空は見事な朝焼けだった。

簡素な、しかし何とも贅沢な朝食をとる。

最後に2人並んで幾度かシャッターを切り

名残り惜しくも

手際よく荷物をまとめていく。


荷物を先に車に積み込んで

再訪を誓いつつ、階段の上から振り返ると

積み石と外壁の板は昨夜の雨をたっぷり含み 主屋は黒く引き締まって見えた。


「旧テーテンス熱海別邸」

設計:前川國男/ 1942年

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