今から90年近く前のこと
詩人であり、若き建築家でもあった
立原道造が小さな小屋のスケッチを描いた。
それは立原が詩作や設計で多くの時間を過ごした
自宅の屋根裏部屋ほどの広さの、 彼自身のための別荘で
「HAUS HYAZINTH」という名をつけた。
しかし、翌年に立原道造は肺結核によって
スケッチした別荘に取り掛かる時間さえ与えられず
わずか24歳にして早逝してしまう。
2004年11月
建築家や文芸家の呼びかけをきっかけに
集まった全国からの寄付によって
ヒヤシンスハウスは
立原の没後65年を経て完成した。
それからさらに20年が経ち
初めて訪れた、その小さな別荘は
緑豊かな湖畔にすっかり馴染んでいた。
緑色の扉を押して中へと入ると
大きく開いたコーナーの窓のおかげで
外に視線を導かれて、その空間が
5坪にも満たないことを忘れさせてくれる。
50代半ば頃からだろうか 記憶の厚みと比例して増えていった持ち物を
減らすことを意識するようになってからというもの
程よい広さとそれに見合うモノはどれ程だろうか…
と、そんな問いかけが今も続いている。